この記事を書いた人:
▶️ 黒沢哲生(千葉中央メディカルセンター) 医師
新型コロナウイルスのワクチン接種対象が2021年6月1日より12歳以上に引き下げられて、子どもへのワクチン接種も広く行われるようになりました。
子どもには感染しにくい、重症化しにくいという話を聞いていたけど、
ワクチン接種は子どもにも行った方が良いのですか?
という疑問を持たれる方もいると思います。
今回は新型コロナウイルスワクチンについて
・なぜ子どもへのワクチン接種も必要なの?
・子どものワクチン副反応について詳しく知りたい!
という疑問に対し、
医学的な根拠をもとに、子どもへのワクチン接種の意義や注意点についてまとめます。
目次
子どもは重症化しにくい?
子どもは高齢者などと比較して重症化しにくいということが分かっています。
出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の”いま”に関する11の知識(2021年8月版)」より 新型コロナウイルス感染症の”いま”に関する11の知識(2021年8月版)
この表から、年齢が上がるにしたがって重症化率が上昇していることがわかります。
重症化しやすいのは高齢者、基礎疾患のある方、一部の妊娠後期の方ということが分かっています。重症化のリスクとなる基礎疾患には次のようなものがあります。
出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の”いま”に関する11の知識(2021年8月版)」より 新型コロナウイルス感染症の”いま”に関する11の知識(2021年8月版)
これらの基礎疾患は生活習慣の影響も大きく、子どもでは人口に対するこれらの割合がそもそも低いです。
しかし、中にはもともと心臓病や肺の病気、腎臓病を患っている子もいます。
そういった病気を患っている子どもたちは、大人と同様重症化に注意が必要なのです。
では、病気を持っていない子どもたちは新型コロナウイルスワクチンを接種する意味はないといえるのでしょうか。
子どもがワクチンを接種する意義
結論から言えば、病気を持っている子も、そうでない子もワクチン接種をする意義は大きいです。
新型コロナウイルスはご存知のように「密」な環境で感染しやすくなります。大人の場合、感染したら一般的には外出を避け、飲食時など他の人となるべく接しないようにして過ごし、他の人への感染を防ぎながら療養することになります。
一方、子どもが感染した場合、
大人と同じように自主隔離して自宅で療養できるでしょうか。
子どもの年齢や自立度、環境によっては可能かもしれません
しかし、普通子どもはまだ親の世話なしに生活するのは難しいです
よって、感染した子どもの世話をする家族への感染拡大が大きな問題となります。親世代、また祖父母世代は感染した場合により重症化しやすく、休職などといった社会的問題も発生します。
子どものワクチン接種は他の人への感染拡大を予防する上で大きな意義を持ちます。
病気を持っている子は、
✔︎ 新型コロナウイルス感染症の発症を予防する
✔︎ 新型コロナウイルス感染症を発症した時に自分の重症化を防ぐ
という意味もあります
ワクチン接種が開始された当初は16歳以上の年齢制限がありましたが、12歳〜15歳でもワクチンの有効性が16歳以上と同程度であることがファイザー製・モデルナ製の両方で示され、接種対象年齢が12歳以上になりました。4)
子どもの副反応の頻度
ファイザー製ワクチン
- ファイザー製ワクチンの副反応
海外6カ国(米国・ドイツ・トルコ・ブラジル・アルゼンチン・南アフリカ)で実施された臨床試験で、12〜15歳の子どもと16〜29歳の年齢の副反応の頻度が報告されました。
出典:C4591001試験「各回接種後7日間における主な副反応の発現頻度」 ファイザー社の新型コロナワクチンについて
比較してみると疼痛、疲労感、頭痛、悪寒などの頻度が高率であることがわかります。12歳〜15歳と16歳〜25歳とで主な副反応の頻度に差はありません。
もちろん、長期的な影響についてはワクチン接種開始からまだ時間が経っていないため不透明です。今後の報告が待たれます。
モデルナ製ワクチン
- モデルナ製ワクチンの副反応
米国(25施設)で実施された臨床試験で、12〜17歳の子どもの副反応の頻度が報告されました。
出典:mRNA-1273-P203試験「各回接種後7日間における主な副反応の発現頻度」 武田/モデルナ社の新型コロナワクチンについて
副反応についての考え方は人それぞれですが、実際に新型コロナウイルス感染症を発症した時の症状や後遺症はさらに強い症状である可能性もあります。
ワクチン接種による副反応や長期的な作用などの不透明性はありますが、新型コロナウイルスの予防の重要性が高いことは間違いないでしょう。
ワクチン接種に行く前に 〜親が気をつけること〜
子どものワクチン接種では、親が注意しなければならないことがあります。子どももワクチン接種の意味をしっかりと理解した上で受ける必要があるからです。
① ワクチン接種の意味を伝える
✔︎ 自分の身を守り、他の人に移さないためにワクチン接種をする
✔︎ ワクチン接種をしても感染予防対策は必要
ということをしっかりと子どもに教え、理解してもらうことが必要です。
② 子どもに副反応が起こりうることを伝え、接種後はよく観てあげる
子どもも副反応が出ます。前項に示したように高頻度で頭痛・倦怠感などが起こりますから、十分にこのことを子どもに説明し、特に接種後に注意して観察するようにしてください。副反応で具合が悪くなった時は無理をさせないことです。
③ ワクチンを打っていない他の人を決して悪く言わないこと
ワクチンを打つ・打たないは個人の考え方によります。
またワクチンを早く打てる子もいれば、様々な理由でワクチンを打てない子もいます。
ワクチン接種の有無を理由に他の人を悪く言ったりしないようにする必要があります。
子どものワクチン接種 まとめ
子ども(12歳〜)のワクチン接種について重要なポイントをまとめると
- 子どもは重症化しにくい
- 他の人に(特に家族に)うつさないためにワクチン接種をする
- 副反応は、特に疼痛、疲労感、頭痛、悪寒などの頻度が高い
- ワクチン接種前に、子どもにも接種の意味、副反応について十分に伝える
- ワクチンを打っていない他の人を決して悪く言わない
となります
12歳以上の子どもに適応となっているファイザー製ワクチンとモデルナ製ワクチンの違いについてもっと知りたい方はこちらも参考にしてください
徹底比較!コロナワクチン モデルナvsファイザー【医師が解説】
現在、世界的に新型コロナウイルスの感染予防対策が行われ、日本でも緊急事態宣などの影響で子どもたちの生活は様々な制限を受けています。そういった制限が子どもの成長や発達に大きな影響を及ぼしています。
子どものワクチン接種を検討している方へ、この記事が参考になれば幸いです。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000786332.pdf
2)mRNA-1273-P203試験
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000808829.pdf
3)厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の”いま”に関する11の知識(2021年8月版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000788485.pdf
4)Frenck Jr RW, Klein NP, Kitchin N, et al. Safety, Immunogenicity, and Efficacy of the BNT162b2 Covid-19 Vaccine in Adolescents. N Engl J Med. 2021: 10.1056/NEJMoa2107456.