【医師が解説】冬の汗が夏より臭く感じるのはナゼ?その理由と対策4選

この記事を書いた人:
▶️ 黒沢哲生(千葉中央メディカルセンター) 医師

「冬の汗」が「夏の汗」より臭いやすいって本当?

誰でもできる簡単な脇汗の臭い対策が知りたいな!

今回はこのような疑問にお答えします

 

先日、こんなツイートをしました

冬に脇汗が臭く感じたことはありませんか?実は冬の汗は夏よりも臭いやすいことがわかっています。それには理由があって、原因を知っておけば対策することも十分に可能です!

今回は冬の汗対策についてくわしくお話していきます


冬の汗が夏より臭く感じるのはナゼ?その理由と対策4選

冬に汗の臭いが強くなる理由は以下です

 1. 夏と比べて汗に含まれるミネラルの濃度が高く、臭いも強くなる

 2.冬は汗が乾きにくい服装を着ているから

 3.冬は洗わない素材(ニット・セーター)を多く着ているから

主にこの3つが原因です

冬の汗が臭いやすい原因は汗自体の成分と、冬ならではの服装の問題の2つが大きく関わっています

 

そのため、冬の汗の臭い対策はこれらの原因を解決すればよいわけで

有効な対策としては

 ・インナーを「吸汗速乾」素材にする

 ・制汗剤を使う

 ・洗わない素材には消臭スプレーを使う

 ・衣服は消臭・防臭効果のある洗剤・柔軟剤を使って洗う

の4つが挙げられます

これらは誰でもできる対策ですので、汗の臭いが気になっている方はぜひ今日から試してほしいと思います

 

それでは、それぞれくわしく説明していきましょう


冬の汗が臭う原因は?

“冬の汗”が夏より臭いやすい理由は

  • 汗の成分の特徴
  • 衣服の問題

の2つに大別されます

①冬の汗は夏と比べてミネラルの濃度が高い

意外と知られていない事実は、「冬の汗」は夏の汗とは違うということ

なんと、

 冬の汗には夏と比べて約2倍の濃度のナトリウムが含まれると報告されています1)

 

その理由として、冬は汗腺の機能が低下していることが挙げられます

本来、汗腺では血液から汗の成分が作られた後、体に必要なミネラルは血管内に再吸収されます。その結果、水成分の多い汗が出ることになります

しかし、冬は汗腺の機能が低下しているためこの再吸収がうまく行われず、ナトリウムなどのミネラルを多く含んだ汗をかいてしまうのです

 

その結果、ナトリウムなどのミネラルが多くなると皮膚の表面がアルカリ性に傾き、皮膚にいる常在菌が繁殖して、臭いがより強くなると考えられています

 

わきの下の汗はもともと臭いが強い

汗を分泌する汗腺には「エクリン腺」と「アポクリン腺」の2種類があります

エクリン腺は全身に分布し、体温調節のため水分を中心としたサラサラした汗を分泌します。約99 %が水で、他に少量のミネラルも含まれます

一方で、アポクリン腺は主にわきや性器周辺に分布していて、ここから分泌される汗は、水のほかミネラル、タンパク質や脂質、脂肪酸などを含むため特有の臭いがあります

つまり、わきの汗は他の場所から出る汗と成分が異なるため、もともと臭いが強いのです

夏は全身に汗をかきますが、冬は熱のこもる体幹部、特にわきの汗をかきやすくなります。そのため、より冬の汗が臭うと感じることになります

②冬は汗が乾きにくい服装を着ることが多い

冬は寒さ対策のために保温性の高い服を着ることが多いと思います

でも実はこれが汗をかき、臭いが出やすい原因になっていることがあるのです

 

もちろん、冬に体を冷やさない服を選ぶのはとても大事です

しかし、覚えておきたいのは

 保温性が高い = 通気性が悪い

になりがちだという事です

 

最近は室内や車の中、電車内でも暖房がついていることが多いですよね。そういった暖かい場所では意外と服の中では熱がこもり、体温調節のために汗をかいているのです

そして服の通気性が悪いと汗をかいた時になかなか汗が蒸発せず、雑菌の繁殖する原因にもなって臭いの元となります

③洗わない素材(ニット・セーター)を多く着る

セーターやニットは基本的に洗わない素材です

春になったらクリーニングする方は多いと思いますが、

ひと冬洗わずに着回す方がほとんどだと思います

 

これは想像に難くないと思いますが、洗わなければ衣服についた雑菌は繁殖しやすく、これが臭いの原因になってしまいます


冬の汗の臭い対策4選

以上にお話ししたような冬の汗が臭ってしまう原因をふまえ、有効な対策を4つ解説します

①インナーを『吸汗速乾』素材にする

汗が残ると臭いの原因になりますから、

臭いが気になる方の場合、汗が付着するインナーを『吸汗速乾』素材にすると良いでしょう

【吸汗速乾とは】

生地についた汗を素早く吸収して乾燥させる機能のことをいいます

吸汗速乾の製品にはポリエステルが用いられることがほとんどです。これはポリエステルが疎水性(水を吸い込まない性質)であることを利用しています。ポリエステル生地に汗がつくと、汗は繊維の隙間に付着して繊維自体には染み込まないため、汗が乾きやすく速乾性が発揮できるのです。

衣服店やスポーツ用品店に行くと『吸汗速乾』や『吸水速乾』と書かれたラベル・タグがついているインナーが売られていますから、それをインナーとして選ぶのが最適です

 

例えばどんなもの?とイメージがわきにくい方のために一つおすすめの冬用インナーをご紹介しておきます

(ミズノ) MIZUNO 男性用アンダーウェア

【おすすめポイント】

・汗をかいてもじっとりとした感じがない

・さらっとした着心地が良い◎

・動きやすい

着心地が良いというのが1番のポイントです。汗をかいても残らないので外出時のインナーに重宝しています

②制汗剤を使う

制汗剤は一時的に汗をおさえる効果があり、臭い対策に有効です

汗っかきの方は制汗剤を脇の下などに使用しましょう

⚠️制汗剤は全身に使わないように注意してください

全身の汗をおさえてしまうと発汗による体温調節ができなくなり、熱中症などの原因になってしまいます

MEMO
〜制汗剤が効く仕組み〜
制汗剤には『収れん剤』という汗腺の穴を塞いだり小さくしたりする物質が含まれ、汗の量を減らします。『収れん剤』として主に使われているのはクロルヒドロキシアルミニウムで、汗腺開口部のタンパクを凝固させ汗腺を塞ぎます。これはすでに数十年以上前から制汗剤として使われていて、他にも化粧水などに含まれています。

スプレー、スティック、液状タイプ…とさまざまなタイプの制汗剤が売られていますので使ってみて一番使いやすいものを選ぶと良いでしょう。

迷ったら、直接塗れるロールオンタイプ(先端にボールがついているもの)やスティックタイプが使いやすくておすすめです

エージーデオ24 デオドラントスティックDX

【おすすめポイント】

・塗りやすい◎

・コンパクトで持ち運びが便利

・塗った後にさらさらとしてベタつきがない

・無香料

持ち運びしやすいので旅行・出張にも良いと思います。効果を高めるため、汗をかく前に塗りましょう!

③洗わない素材には消臭スプレーを使う

ニットやセーターなどの洗わない素材には、着た後に消臭スプレー・除菌スプレーなどを使い、清潔に保つようにしましょう。毎回脱いだ時にスプレーしておくだけですから、そんなに手間ではないはずです

一度着ただけで臭うようになる?と思う方もいるかもしれませんが、汗がついたまま何もせずに保管していると次第に臭いがついてしまいます

ファブリーズ 除菌 消臭 スプレー

【おすすめポイント】

・無香料

・トウモロコシ由来の消臭成分なのでお子様のいるご家庭でもOK

私はニットだけでなく、マフラーやコートにも使っています。使うものによってスプレーする回数が異なりますが、それにさえ注意すれば十分な効果が感じられると思います。

 

④衣服は消臭・防臭効果のある洗剤・柔軟剤を使って洗う

洗剤・柔軟剤を変えるだけでそんなに違う?と思われる方も多いと思いますが、一度試してみるとその違いを実感できるかと思います。

個人的なおすすめを載せておきますので、一度試してみてはいかがでしょうか?

ソフラン プレミアム消臭 柔軟剤

【おすすめポイント】

・グリーンアップルのようなほのかな良い香り

・消臭効果が高い!

衣服の臭いが気になる方は、まずこれを使ってみてください!柔軟剤の香りについては好みが分かれるところですが、これはあまりキツすぎない香りで良いのでは、と思いました

注意していただきたいのは

それでも、生乾きにしていたり服の保管に問題があると臭いが出るということです

 

服の保管場所に注意!

普段洗わない服をしまうときは、以下の4つに注意が必要です

・クローゼット保管の際はたまに換気する

・服をタンスに詰め込みすぎない

・クリーニング後はビニールを外して保管

・ニットを着ない季節は防湿剤を入れて保管

また、洗面台・お風呂の近くなどはカビが生えて臭いの原因になりますから、服の保管場所にも気を使いましょう。

これらをしておくと服の臭いを防ぐことができますよ

 

ということで、今回は以上です

冬の汗は臭いやすく、最後にもう一度対策をまとめると

  • インナーを「吸汗速乾」素材にする
  • 制汗剤を使う
  • 洗わない素材には消臭スプレーを使う
  • 衣服は消臭・防臭効果のある洗剤・柔軟剤を使って洗う

これだけです

どれも簡単な工夫ですが、効果は十分に実感できると思います。これだけで日頃の悩みから解放されると思いますので、ぜひ『冬の汗の臭い対策』を今から始めてみてはいかがでしょうか。

この記事がお役にたてれば嬉しいです

 

この記事の参考文献
1)W Keatisuwan et al. Physiological Responses of Women during Exercise under Dry-Heat Condition in Winter and Summer Journal of Physiological Anthropology 1996; 15(4):169-176

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